アメリカの銃規制 ピストルとは
突然ですがあなたの使っているピストル、本当にピストルですか?
ARピストルに使ってはいけないアイテム使ってませんか?
気が付かないうちにライフルになっていませんか?
Photo from Daniel Defense,PALMETTO STATE AMORY
画像の左右にある銃、ほとんど同じに見えますが実はカテゴリが異なります。右側がショートバレルドライフル(SBR)というカテゴリで、左側はピストル(以下PISTOL)カテゴリの銃になります。右下はグロックに別売のストックを取り付けただけでこれはPISTOLではなくショートバレルドライフルとして分類されます。逆にライフルにしか見えない左下はライフルではなくPISTOLになります。
使いやすいから付けてみよう・・・そのちょっとしたことで法律を犯しているかもしれません。
※米国連邦火器法(NFA)にならびに銃規制法における違反であり日本のエアソフトガンには全く関係ありません。
※当然ですがエアソフトガンのカスタムは国内法に抵触しない限り個人の自由です。ARピストルカスタムはこうじゃないとダメ!とかではありませんのであしからず。あくまで参考程度にしてもらえればと思います。
どう見てもライフルでしかない銃がPISTOLなのか?
なんでPISTOLにする必要があるのか?
最近たまに聞くARピストルって何?
本記事を読めば銃社会アメリカのルールが少し理解できるかもしれません・・・
※本記事で触れているのは連邦法による規制のみとなる為、州によって異なることがあります。またフルオートが可能な火器はすべてMACHINE GUNカテゴリとなる為、単発式やセミオート銃での話となります。
銃購入の流れとルール
Photo from Daniel Defense,SMITH&WESSON,RockRiverArms
銃を購入する場合、共通して必要になるのは身分証明書、申請書類です。この時全米犯罪経歴調査システム(NICS)による身元照会がありこの審査をクリアしなければ購入できません。 16インチ以上のバレルを持つ銃、LBR(ロングバレルドライフル)に関しては当日購入することもできますが16インチ未満のSBR(ショートバレルドライフル)に関してはTitle2と言われる規制の強い武器カテゴリとなり、審査が厳しく時間がかかります。銃に関する取り締まりを行うATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)での事務処理等で1年以上かかることがありその間、その銃を手元に置くことはできません。 最近ではATF FORM1 「銃器の製造と登録」書類を電子申請することで最短、数か月で書類が通りますが一般的に購入する場合はATF FORM4という書類になるため1年以上待たされる場合があります。またどちらの書類も申請時に$200の収入印紙(Tax Stamp)が必要になります。
ARピストルはストックではなく片手で操作できるようにスタビライジングブレースを装着することでSBRカテゴリではなくPISTOLカテゴリの銃として扱われ数日の待期期間はありますがすぐ受け取れる上、SBRと違い$200の収入印紙も必要ありません。また所持に関する規制も緩いのでSBRを購入できない層には特に人気があります。
そのためメーカー各社は一般的なライフルとは別に短いライフル風の武器をPISTOLとして販売しています。
ARピストルのセットアップ
ARピストルでセットアップを組む際に使用できる装着できるパーツ、装着で違法となってしまうアイテムがあります。 ARピストルはあくまでPISTOLというカテゴリでありライフルのようにストック(銃床)が取り付けられるとSBRカテゴリになってしまい違法です。 スタビライジングブレースはあくまで片手射撃用の補助器具となっておりストックとは異なります。 またバーティカルフォアグリップ(VFG)を取り付けるとこで 両手で扱う銃になりPISTOLカテゴリではなくAOWと言われるカテゴリとなりSBRと同じく規制対象です。 しかしながらハンドストップや角度がついたAFG-1のようなアングルドフォアグリップ(AFG)は規制対象外となっており 取付したままでもPISTOLカテゴリを維持することができます。 バイポッドに関しては取り付けできますがグリップの性質を合わせもつバイポッドグリップは違法です。
余談ですが法律上、ライフルとして販売されている銃にスタビライジングブレースを装着してもPISTOLにはならないので注意が必要です。
ARピストルの規制に直接関係ありませんがサイレンサーはNFA(連邦火器法)で規制されるアイテムとなるので申請なしでは所持できません。 手に入れるにはSBR同様にATFに申請書類と共に$200の収入印紙を提出し1年以上の事務処理等を待つ必要があります。 (サイレンサーに関してもATF FORM1 銃器の製造と登録による申請が可能で最短で数ヶ月で入手できます)
銃の全長に関するルールと例外
先ほどPISTOLにバーティカルフォアグリップを取り付けるとAOWになるので取り付けできないと説明しましたが例外もあります。OAL(全長)が26inch以上の場合はPISTOLやLBRと同じく規制対象外のFIREARMと呼ばれるカテゴリとなりこの場合好きなフォアグリップを取り付けできます。厳密にはARピストルでは無いですが、民間ではよく見かけるセットアップの一つです。
ARピストルにすることで特筆して使いやすくなる点などはありませんが新しく銃を組むときにひとつ制限を設けても面白いと思います。
当店でもARピストルを組むためのパーツを販売しているので興味がある方は挑戦してみてください!
また州によっては装弾数10発以下やピストルグリップの使用不可といった独自の法律があるので調べてみると面白いですよ!
本記事で触れているのは連邦法(主にNFA)による規制のみとなる為、州によって異なることがあります。また2021年4月現在の情報であり社会情勢による規制強化などによって変化、異なる場合があります。当記事によって生じたトラブルに関して一切責任を負いかねますのでご了承ください。
追記 2023年 新たな銃規制・・・
当記事で紹介しているピストルブレースを使用したARピストルに関してはバイデン大統領により規制されると以前より噂がありましたが、2023年1月31日 ATF final rule 2021R-08F“Factoring Criteria for Firearms with Attached ‘Stabilizing Braces,’”(ATF最終規則2021R-08F スタビライジングブレースを装着した銃火器の評価)によりPISTOLとしてのカテゴリーではなくSBRとして分類されることになりました。それによりピストルブレースを装着した銃を所持している人は官報掲載された日から120日以内(2023年5月31日)にSBRとして再登録する必要があります。通常はSBR登録時には200ドルの収入印紙が必要ですが、今回は特例措置として不要です。※違反した場合最高25万ドルの罰金+最高10年の懲役+銃を失います
そのため紹介している内容は既に意味がなくなってしまいましたが、アメリカに存在した奇怪な制度として当記事はこのまま公開を続けたいと思います。過去に同じく規制になったバンプストックのように所持が全面的に禁止されているわけではなく現在でも使用することは可能なので今後もセットアップで使ってあげてください!
用語解説
用語
NFA(National Firearms Act)
強力すぎる武器を規制するために1934年に制定された連邦火器法。
アメリカの銃規制を構成している法律の一つ。
Title 2 weapons
NFAによって指定されている武器。SBRはこのカテゴリに含まれる。
所持審査が厳しく収入印紙などが必要。
Title 1 weapons
NFAに指定されていない武器。
Title 2 weaponsと比べると所持が容易。
インチ(inch)
1inch = 25.4mm
バレル長
銃口(バレルの先端)から閉鎖したボルトやブリーチフェイスまでの距離。
ハイダーなどのマズルデバイスは含まれないが、溶接など恒久的に取り付けられている場合はバレルに含まれる。
OAL(Over All Length)
銃口(バレルの先端)から銃の後端までの距離。
ハイダーなどのマズルデバイスは含まれないが、溶接など恒久的に取り付けられている場合はバレルに含まれる。
ライフルの場合はストックを伸ばした状態で計測されるが、PISTOLやAOWなどのストックが無い銃は射撃可能な最小構成での計測となる為、スタビライジングブレースはOALに含まれない。
LOP(Length of Pull)
トリガーから銃の後端までの距離。
スタビライジングブレースは13.5インチを超えると規制の対象。
サイレンサー
SBRやAOWと同じくTitle 2 weapons。
スタビライジングブレース
ピストルブレースとも呼ばれる片手射撃用の補助装具。
見た目がストックに似ているものが多い。
VFG(Vertical Foregrip)
垂直に取り付けられたフォアグリップ。
PISTOLで使用不可能。
AFG(Angled Foregrip)
垂直ではなく斜めに取り付けられたフォアグリップ。
ハンドストップと同じくPISTOLで使用可能。
武器カテゴリ(省略している箇所があります)
MACHINE GUN
Title 2 weapon
フルオート射撃が可能なすべての銃とフルオート改造用の部品。
LBR(Long-barreled Rifle)
Title 1 weapon
OAL26インチ以上かつバレル長16インチ以上のライフル
ライフルとはライフル銃身を通して一度に1発の弾丸を肩から発射するように設計された銃となる為、ストックが必要。
SBR(Short-barreled Rifle)
Title 2 weapon
OAL26インチ未満もしくはバレル長16インチ未満のライフルまたはライフルから改造した武器
LBS(Long-barreled shotgun)
Title 1 weapon
OAL26インチ以上かつバレル長18インチ以上のショットガン
ショットガンとは滑腔銃身を通して一度に1発の弾丸(ペレット)または発射体を肩から発射するように設計された銃となる為、ストックが必要。
SBS(Short-barreled Shotgun)
Title 2 weapon
OAL26インチ未満もしくはバレル長18インチ未満のショットガンまたはショットガンから改造した武器
PISTOL
Title 1 weapon
片手で射撃する武器
ストックとVFGが使用不可能。
滑腔銃身の銃は対象外でライフルからの改造は認められていない
AOW(Any Other Weapon)
Title 2 weapon
PISTOLではない小型の銃や仕込み銃など
基本的にOALが26インチ以上で対象外(傘に偽装した銃など例外あり)
FIREARM(No NFA Firearm)
Title 1 weapon
NFAの規制対象外でLBRやLBS、PISTOLでもないその他の銃器
OAL26インチ以上でストックが無い銃など
DD(Destructive Device)
Title 2 weapon
手榴弾、ロケット、大口径の銃(1/2インチより大きい口径)など
一般的なスポーツ目的のショットガンやフレアガン(信号銃)は例外
ANTIQUE FIREARM
Title 1 weapon
武器として使用される可能性が低く、1899年より前に製造された、DDとMachine gun以外の銃。